1.首こり病(CNMS:頚性神経筋症候群)とは
前述の認知覚とトリガーポイントについて、もっと詳しく説明しましょう。
私は首のこりが様々な不定愁訴を引き起こすということを世に認知させてくれた、CNMSの発案者である松本孝嘉医師に感謝しています。
CNMSという診断名があることにより『私の症状は、首のこりが原因で起きている』と、患者様が知る機会が増えたからです。首に多くの病気の原因が潜んでいるということを西洋医学が認めたということは、多くの不定愁訴に悩んでいた患者様にとっての救いとなったことでしょう。
今までの西洋医学では画像診断がメインであり、画像に映らない“コリ”に対して語ることは、あまりありませんでした。つまり、画像に異常がなければ治療を行うことさえしてこなかったのです。このことは、慢性疼痛が増えた要因の一つではないでしょうか?
対して我々鍼灸師やマッサージ師は、長期に渡ってコリが原因である沢山の不定愁訴と戦ってきました。コリを探せる、コリに鍼を打てる鍼師の技術が、今、必要とされています。効いているのかわからない電気治療や、意味もなく首をけん引する治療をする時代は終わったのです。
首には、細かい筋肉が沢山付いています。また、首には伸展、屈曲、回旋、側屈などの様々な動きがあります。伸展しながら回旋したり、側屈しながら屈曲したりと、その動きの組み合わせは様々です。
そして動きの組み合わせによって、筋肉の連結部には摩擦が起こります。
その筋摩擦により、その筋肉の連結部にコリが形成されます。
そうして生まれたコリが各種症状を出現させるのです。
首コリを治すには、コリができやすい場所についての知識、コリを触れる触診力、そしてそのコリに鍼を打てる技術力や骨格筋の解剖学的知識が必要なのです。
単に首をマッサージしたり、首に電気をかけたり…というだけでは、意味が無い。
首の筋を一つ一つ診ること。そして首の「○○筋のコリ」を1筋1筋触診できる技術が問われる時代なのです。
CNMS(頚性神経筋症候群)とは
●CNMS(頚性神経筋症候群)はどんな病気なのか?
頭痛やめまい、いわゆる不定愁訴が慢性的に続く「CNMS(頚性神経筋症候群)」は首の後ろにある筋肉の異常によって引き起こされる病気です。慢性疲労症候群、むち打ち症、めまい、頭痛、うつ状態、パニック症候群、ストレス症候群、自律神経失調症、更年期障害の60%が該当する疾患群で、複数の疾患を合併している場合が殆どです。頭痛や微熱、体がだるい、やる気が出ないなどの不定愁訴にも似た症状が多いために診断されるまでに時間がかかり、複数の病院で受診を繰り返す患者さんも多いのです。
確かに『私の頭痛は首のコリが原因だ』『私のうつ状態は首のコリが原因だ』とは、なかなか考えないものです。普通は頭痛症状で受診をすれば頭痛薬を処方され、うつ状態で受診すればうつ病の薬を処方されます。つまり筋肉のコリが原因で症状が出ているCNMSと気が付くまでには多くの時間を費やしており、同じ生活を繰り返していれば徐々に悪化していき、発見までが遅れてしまう病気です。
当院は鍼治療が中心の治療院なので、頭痛・うつ状態・慢性疲労症候群・パニック障害・自律神経失調症・更年期障害がなかなか治らないという多くの患者様を診させて頂いています。実際に鍼灸治療で『首や肩のコリ』を治療する事によりそれぞれの症状が改善していく様子を見ています。その様子を見ていますと、今までの症状はCNMS(頚性神経筋症候群)に因るものであったという事が実証されるのです。